新・韓国現代史 (岩波新書)

1910年の韓国併合から現代へ至る韓国の歴史を概観できる良書である。タイトルに「新」いう文字がある通り本書は2005年に同じく岩波新書から出版された『韓国現代史』のアップデート版である。この１０年間つまり李明博と朴槿恵政権の記述が追加されたほかその他の部分も変更が加えられているようである。新書ながらも情報量が多く、比較的ニュートラルな視点で書かれているので韓国の歴史を学ぶ上での最初の一冊としてもおすすめである。ただ、記述の中心が政治・思想となるので決してライトな読み物ではないことは注記しておきたい。本書は、序章を含めると５章で構成されている。序章では、近世の東アジアの状況や植民地時代のことが書かれている。比較的さらりと書かれているので植民地時代の韓国のことを知りたい人にとっては物足りないだろう。本書の中心をなすのは１章から３章までと言える。日本の敗戦による解放、朝鮮戦争、軍事政権、クーデター、数々の流血事件と韓国の民主化までの道のりが描かれている。４章は、民主化が成し遂げられたのちの韓国のストーリーである。グローバル化そして新自由主義の時代とその反動としての歴史の逆流である。ここに関しては、小泉政権後の日本のストーリーと驚くほど似ている。著者は本書で次のように書いている。「ハッピーエンドに見えた物語の背後にあった逆流の時代への趨勢を見落としていたというほかない。（中略）盧武鉉政権期にリスク社会の拡大・深化に歯止めがかけられなかったことが、保守政権の復活を許し、息を潜めていた旧時代の亡霊たちを一挙に蘇らせてしまった。盧武鉉は自死し、いまや歴史の逆流は止まるところを知らない。」もちろんこの流れは日本や韓国だけではなく、多くの国で現在起きていることとも言える。この逆流の行き着く先が２０世紀という戦争の世紀の繰り返しであってはならない。ハッピーエンドの背後に旧時代への逆流があったように、この逆流の時代に僕たちは未来への平和と繁栄の道を探さなくてはいけないと本書を読んで強く思った。