世界史概観〈上〉 (1966年) (岩波新書)

原著は1965年。著者は「宇宙戦争」や「タイムマシン」で有名な小説家のウェルズ。訳者曰く・・・ウェルズは国際連盟となるべきものへの運動を同志と起こして行動し、その樹立の功労者の一人だった。世界的名士だった。ウェルズは1920年にロシア革命に関心をもってロシアを訪れ、レーニンに会う。レーニンは彼をブルジョア、俗物と後に評したという。ウェルズもマルキシズムの支持者となることはなかった。曰く・・・原始人はおそらく、児童が考えるように、想像的な絵の連続のような風に考えていたのであろう。想像によって心象を作り出し、あるいは心象が彼の心に浮かび、それによって起こされた感情によって行動した。アッシリアが衰えるとエジプトは発憤して異民族を追い払う。アッシリアは付近の敵と戦っていたので貧弱な抵抗しかできなかった。アッシリアはメディア、カルデア、第二バビロニアによって分割された。栄光の絶頂期でも、ソロモンは小さな一都市における従属的でちっぽけな王にすぎない。彼の権力は束の間のものにすぎず、ソロモンの死後数年にしてエジプトにエルサレムを占領された。ペルシアのダリウス一世は、騎馬上手のスキティア人の母国である南ロシアを手に入れようとして北方に進軍したが敗北。ダリウスはスサに戻ったが、アジアにおけるギリシア人の諸都市が叛乱を起こす。ダリウスはヨーロッパのギリシア人を征服しようと決心し、ヨーロッパ侵略が始まった。アレクサンドリアはたくさんの書物を生産したが、廉価な書物を生産しなかった。知識は、富裕階級および有力階級以下のものにはひろめられなかった。イエスは非常に人間らしい、非常に真剣で熱情的な、すぐ怒りを発することのできる人物だった。あきらかに人格的魅力の強い人物である。イエスは、万人をみな神において一つのものとするとし、形式宗教の取引的な正義観を容赦なく打破する。また、敬虔な生涯をおくるために掟を守ろうとして小心翼々とすることも非難する。ローマ帝国が成長したのは市民権の観念。多数の人びとがローマの市民権を意識しており、ローマ市民たることを特権であり義務であると感じ、ローマ法の下での自分の権利を確信し、ローマの名において潔く犠牲を払おうとした。ポエニ戦争の時代には、市民権の意識が、富および奴隷制の発達によって掘り崩されかけていた。市民層は拡大されたが、市民権の観念は拡大されなかった。３世紀、コンスタンティノープルはキリスト教の異端者の狩り出しに忙しかった。マニ教の概念がキリスト教にしみこんだので、これと闘わねばならなかった。他方、キリスト教から来た観念がゾロアスター教の純粋さを害した。などなど。