リスクアペタイト・フレームワークの構築

著者はリスクアペタイト・フレームワーク（RAF）のことを、「結局、様々なステークホルダーの意向を受けて、経営者がどの程度のリスクアペタイトを有するに至ったのか、さらには、これに基づいて実際にどのように現場がリスクをテイクしているのかを、第三者がみても、分かるように示す枠組み」であり、従来の統合リスク管理（ERM）では取り込まれていなかった、インパクトの把握が難しいリスク等が含まれると述べている。本書の構成は、①RAFの概要と歴史（SSG, FSB の報告書）、②金融機関の対応（IIF の報告書、バークレイズ・HSBC の事例）、③- ⑦RAF 構築の作業ステップ、⑧ケーススタディ（バークレイズ、HBOS、日本長期信用銀行）からなっている。著者の日本語は練られており、また、箇条書きも効果的に用いられているために、読み進めやすい上に要点を得やすい。私が購入して読んだきっかけは、国内MBAコースのクラスにおいてテキストとして指定されていたためだが、2015年現在におけるリスク管理の状況と考え方をざっと知る上で有用な一冊であることは間違いない。以上により、MBAコース受講生や金融機関の若手はもちろん、IR部門の方や個人投資家など、幅広い方に推薦できる。